2002年10月31日

【百万年の船】ポール・アンダースン

ポール・アンダースン / ハヤカワ文庫
 久々に読み返す。これも2巻までは大好き。小説内時間が未来となる3巻がよく分からない。舞台がSFになるとなんだかよく分からなくなる私(^^;)。そういえば初めて読んだときも3巻について文句を言ったらだんなに「君はSFの読み方が分かってない」と言われましたねえ。うむ、未だに分かってないような気がします。分かりません。うん。

 不死であることの悲しさ、切なさ、その寂しさゆえ共に歩める同類を用心深く、しかし情熱的に求める彼ら。何も変わらない、永遠に続く、と言うことがどんなに恐ろしいことか、切々と迫ってくる小説です。不老不死を求める皇帝の話を読んだあとでこの話を読むと、ため息が出ます。

SayaT at 2002/10/31 | Comments [0]

2005年01月31日

ぼくんち・その2

 その1を書いてから、じっくり再読。久しぶり。でまたなんか書いている、と(笑)。いや、だって書き足りない(笑)

 思うに、とても分かりやすい「記号」なんですね。この作品は。マンガというもの自体が記号から成り立っているわけだけど(その記号を確立したのが手塚治虫で、少女まんが独特の記号を展開したのが昭和24年組のあの方々…という論説を昔どっかで読んだ。確かに…と思った)。このまんがもやはり記号で描かれている。それもとても分かりやすい記号(よく使われる記号、と言い換えても良い)。でも、この「記号」ってのは下手するととってもベタになってしまうのね。恥ずかしくって読んでられなくなる、と言うか。この「ぼくんち」も「ああ、ベタな表現だなあ」という部分が随所見受けられるのだけど(でもって、狙ってるなあ、とも思う)、でも巧いのよ。文章が巧いんだなあ。短い文章で実にツボをついた表現をする。狙ってるな、と思うのに、その狙い所にすとっと落とされてしまう。巧いなぁ…

 かのこ姉ちゃんに関して追記。姉ちゃんはこの先長く生きられないような気がしてきた。だから二太を手放した。一太の様にさせないために(姉ちゃんには、一太がどうなっているのかはきっと分かっている)。姉ちゃん、ずいぶん疲れてきている。泣いたら世間がやさしゅうしてくれるか!泣いたら腹がふくれるか!泣いてる暇があったら笑え!と、笑って生きてきた姉ちゃんが、だんだん笑えなくなっていく。(それでも自分の脇腹をこそばして無理矢理笑おうとする)。かのこ姉ちゃんが求めてきたものは得られなかった。それはこの町の環境のせいなのか、もっと他に理由はあるのか。手に持てるだけのものを持って、この町で一太と二太と、家族で暮らしたかっただけなのに。
 なんだかねえ。やはり絵本のような体裁と乾いた笑いとで見えにくくしてあるけど、物凄くウエットで悲惨な物語だな(^^;)

 きっと二太は漁師のじいちゃんの元で元気よく育っていくだろうな、と言うのと、こういち君が素朴で静かな生活を見つけたのが、大きな救いになっているのだろう(こういち君のあれはファンタジーだね。それこそ、世の中そんなに甘くないだろう、と思う。でもみんなが自分の手の大きさにあった幸せを見つけることができたらいいのにね)。漁師のじいちゃんが魚を捕って平和に生活していけますように。読み終えたあと、昔も今も切に願う、読後の感想である。

  
鳥頭紀行も再読して、苦笑い大笑いしつつ、やっぱり住む世界は違うわ。しかし、表に出てこない部分で妙に共感してしまうのも同じだわ。

SayaT at 2005/01/31 | Comments [0]

2005年01月26日

【ぼくんち】/西原理恵子

西原理恵子 /小学館 スピリッツとりあたまコミックス
全3巻の中の第1巻↑。全てを1冊にまとめたコミックスも出ているようだけど、お財布に余裕があるなら是非、とりあたまコミックスで読まれることを強力おすすめ。絵本のような作りで、それがまた切なく哀しく、面白い。

 西原理恵子って凄いと思う。「ぼくんち」を読み「とりあたま紀行」を読んで、どういう人なんだろう、と、腕組みをして考え込むが、私ごときには答えはでない。凄い人であり見事な才能であると、私は思う。(^^;)。

 この人が実際に属する世界はよく分からないけど、この人が描く世界は、映画「モンスター」の感想でも書いたけど「私とあなたは住む世界が違う」なのである。私はこういう世界では生きてこなかったし、身近にもなかった。多分これから先も身近に見ることはないように思われる世界である。でも、ガンガン来るんですよ。堪らなく切なく愛おしく感じる。思うに、西原理恵子氏のものの考え方の根っこが大好きなのだと思う。住む世界が違っても根っこの部分が同じ人っているのだろうか。いるのだろうな、と思える。(実際、同じ様な環境、境遇に棲息している人達でもどうにもこうにも思いが沿えない人も多数いるから、世界が違っても同じようにものを考える人はいるんだろうな、と思う)

 かのこ姉ちゃんが、私は大好きだ。モンスターの主人公と同じ様な立場に、多分彼女はいる。でも、彼女は自分の「生きる道」が本能で分かっているように見える。そして彼女には守りたい子供たち(弟たち)がいる。いるけど、彼女はその子供たちを保護や道徳で囲ってしまったりはしない。かのこ姉ちゃんは無自覚にではあるが「生きていく」事についての哲学を自分の中にしっかり持っているから、子供たちに日々の辛い現実のそのまん中で、それ(人間として生きていく一番の根っこの部分)を教え込む。姉ちゃん凄い。全然立派じゃないし世俗にまみれて一般的に見れば底辺のめちゃくちゃな生活と人生なんだけど、でも、かのこ姉ちゃん凄い。彼女は一番大事な選択肢の選択を間違わないのである。これが凄い。
 しかし姉ちゃんが弟たちにどんなに愛情を注ぎ頑張ろうとも、世の中は甘くないから、弟たちのうちの兄ちゃんの方は道をどんどん踏み外していく。それは人手に渡ってしまった「ぼくんち」を取り戻すためであり、姉ちゃんのためでもある。でも、彼は道を間違える。家は戻らないし姉ちゃんの境遇も変わらないし、事態はどんどん悪くなっていくだけ。自分が道を踏み外していることを分かっていながら、彼にはもうどうしようもないのがとても哀しい。結局姉ちゃんは、昔の家を燃やしてしまい、一番末の弟を遠い親戚のじっちゃんに預ける(いつか迎えに来てな、と言って)。これが彼女の最後の選択である。とても哀しく切ない選択だ。そうして「ぼくんち」はバラバラになってしまう。…こんな風に説明すると、えらく悲惨な話のように思えてしまうけど(実際とてつもなく悲惨な内容の世界なんだけど)、それをギャグも織り交ぜて笑いを込めながら描いてしまうところに西原氏の凄いところがあるんだと思う。このマンガには、「人間にとっての一番大事な部分ってなんだ?」と言うメッセージがてんこ盛りになってると思うよ、私は。(そんなこと言ったら、西原氏は「ケッ」と言うだろうけど(笑))

  
余談の追記;

 現在毎日新聞で毎週火曜に連載中の毎日かあさん」は、さすがに一般紙連載だけあってかなり毒は抜けておりますが、でもやはり「西原氏」のマンガでとても楽しい。でもって、、やはり私は西原氏の考え方の根本が大好きなんだと思う。だって、子供の育て方、と言うか、子供を育てるに当たっての信念が同じだもん!(笑)。西原母さん頑張れ!


も一つ追記。
読んだのはずいぶん前で、最後に読み返してからももう1年くらい経ってるのに、そのまま感想なんか書くもんだから、一番大事な部分をすっ飛ばしてたじゃないか(^^;)。と言うことで、本文一部修正。アップし直し。

SayaT at 2005/01/26 | Comments [0]