2005年02月21日

【ぼくは怖くない】

(DVD)2003/伊/ガブリエーレ・サルヴァトーレスネタバレ満載注意。
 予備知識皆無、内容も全く知らず、ただ、なんとなく借りてきたのだけど大当たりの作品でした(たまにこういう事がある。とても幸せ)。冒頭、一面の麦畑が目に飛び込んできた瞬間からすっかりやられました。音楽、抜けるような青空、熟した麦の立てる幽かな音。その空気感。単調に続く虫の声、そして子供たち。これは映画館で見たかった。心から思う。どこかでやってくれないかなぁ……(少々遠くても行くよ、私は)
 お話は別になんと言うこともないのですが、でも、始終子供の目線で描いてくれたのがとても良かった。何が良くて何が悪い、そんなのは何も関係ない。大人の視線はそこにはない。10才の子供の視線があるだけだ。父親達の会話を盗み聞きし、子供なりに一生懸命想像し考える。最初は、いつも作っている物語の中のようなファンタジックな感じなんだけど、だんだん現実的になってくる。
 何かがおかしい。何がおかしいんだろう。お母さんはなぜ泣くのだろう。でも、あの子を殺しちゃだめだ。なんかおかしい。絶対変だ。疑問でいっぱいなんだけど、でも、あの子を殺すって言う大人達の言葉、それは絶対おかしいというのだけは分かる。だからぼくは走る…。
 そう言う意味ではラストはちょっと引っかかってしまうのだが(作り事なような感じを受ける。視点が一気に変わってしまったという印象かなあ)、でも、子供が酷い目に遭うのは辛すぎるので、あれで良し。誰も死ななくて良かった。本当に。
 
 勢い余ってサントラにまで手を出したのだが、何これ…(;_;)。映画ではあんなに浸れたバイオリンの音が、CDでは気持ち悪い。音程の気持ちの悪いズレ。頭の芯がきぃぃぃひぃぃいってなりそうな…(^^;)。めちゃくちゃ哀しい私である。サントラでずっとあの音楽を流しながらトリップしようと思ってたのにトリップどころか歯の根があわなくなるような気持ち悪さ(T^T)

 スタンド・バイ・ミーとよく引き合いに出されているようですが、私はあちらは未見。見てみようかなぁ……。スタンド~の方は小説だけ読んでうっちゃってたのですが(キングのこの手の小説はあまり好きでない。キングが嫌いなのか、翻訳者が気にくわないのかは不明)。でもこの映画では、私は子供たちもだけど、一面の麦畑と空と音楽とあの廃屋にメロメロになった部分が大きいので、スタンド・バイ・ミーではどうでしょうね。ともかく見てみないことには何も言えないか…(笑)
 

 
余談、と言うか、ミーハー(笑)。
 初めてフィリッポとまともな(子供らしい)会話を交わしたあとの、ミケーレのあの幸せそうな顔と動作(目を瞑って手放し自転車で幸せそうに坂を下る)。「新しい友達ができた!ぼくだけの内緒の友達だ!」と言わんばかりの笑顔。…君全然状況が分かってない(笑)。ああ、子供だねえ。もう堪らないです。
 鎖を外されているのを見て、お散歩に出かける2人(散歩じゃなくて逃げろよ!と大人は思うのだが(^^;))。夕方になったからぼくは帰らなきゃ。君は穴に戻ろう。そして素直に戻る彼ら。…あああああ(^^;)。そこに子供しかいない限りそこは平和な地のに(2ヶ月も暗い穴に閉じこめられ飢え乾き、自分はもう死んで居るんだ、と思いこんでいたフィリッポにとっては、ミケーレといる時間、空間は天国であったろう)、大人達が来たとたんその穴は地獄に戻ってしまう。どんどん状況は変な方に転がって行き(当初の、あのことぼくは兄弟かもしれない、と言うファンタジーは影を潜め)大嫌いな村の不良に殴られて、お母さんも酷い目に遭わされて、お父さんの友達が銃を突きつけられ、お母さんが泣いているのを見て、やっぱり絶対何かがおかしい、間違っている、あの子を助けなきゃならない、と決断するミケーレ。…と書くとなんか深刻なんだけど、場面はあくまでも抜けるような青空に一面の金の麦畑。その対比が堪らないわけです。

 大人になったらこの村を出て行くと約束して、と言うお母さんの言葉は辛い。思わずここはサルディーニャか、と思ってしまったが、これは到底プロ集団ではないわね(^^;)。当時イタリアではこういう誘拐事件が多発していたようだけど、辛い結果になったことも多かったんでしょうね。ああ、辛い。

SayaT at 2005/02/21 | Comments [0]

2005年02月17日

【モーターサイクル・ダイアリーズ】

(劇場)2003/英・米/ウォルター・サレス
 チェ・ゲバラの青春冒険旅行物語。後半部分は、その後のゲバラの運命を暗示するようなカットも所々入りますが、基本的には無鉄砲な若者2人の南米横断珍道中。若さゆえの無鉄砲さ、無防備さ、はちゃめちゃさがとても楽しい(君ら2人、よく生還したなあ)。
 これは、チェ・ゲバラに思い入れがあるかないか、彼への知識の有無でずいぶん感想が変わってくる映画だろうなあ、と思います。ちなみに私自身に関して言えば、ゲバラに対しては大まかなアウトライン知識しか持っておりませんし(ゲバラが医学生だったってのさえ知らなかったよ)、思い入れは全くなし。思い入れがあればもっと楽しめたのかもしれないし、思い入れがありすぎると描き足りなさへの不満が爆裂したかもしれません。

 現実のゲバラではなく映画のゲバラへの感想。エルネストはその思いを医療にはぶつけず革命に走ったのね。彼が求めたものは南米にもたらされたのでしょうか。あまり変わってないような気もしますが(あのあたりの政治や情勢には疎い私はよく分からない)。でも、革命ではゲバラが夢見たものは手に入らないね、多分。人間が人間である限り無理なような気がしますな。といっているだけでは何も始まらないので、何か行動を起こさなければならない。そういう意味であの2人は素晴らしい(行動の是非は今はとわない)。行動を起こせる人を私は尊敬します。

  
余談。チェ・ゲバラって「おい、ゲバラ」だったんだー。うちの本棚のどこかに、ゲバラの本があったはずなんだが、読んでみようかな、どうしようかな。読むなら他にキューバや南米の知識も必要になってきてしまうよ(というか、それらが分かっていないと面白くないと思う)。うーん…

SayaT at 2005/02/17 | Comments [0]

2005年02月16日

【呪怨(劇場版)】

(TV)/2002/日/清水崇
 本日テレビでやってたのを、息子がくっついてくるので(1人で見るのがいやなのか?(笑))なんとなく一緒に観賞。おや、前見たのと全然違う、と思ったら、今夜のは劇場版だったのね、多分。
 ビデオ版(元祖、ですね)の方が良いな。理不尽な怖さ全開。いや、私の好きな怖さではないけど、でも、この劇場版見てビデオ版の呪怨をみなおしました。あれはあれでなかなか良かったのだな(ただし、1巻目のみ)。 ビデオ版の方が、「ワケも分からず呪われて殺されていく、何がなんだか分からないけどいやだ」、と言う気分はいっぱい味わえました。劇場版の方はなんだろう。一応ストーリーを作っちゃったから拙いのかな。

SayaT at 2005/02/16 | Comments [0]

2005年02月15日

【ミスティック・リバー】

(DVD)2003/米/クリント・イーストウッド
 なんだかとっても気分の悪くなる映画でした。気分の悪くなる映画といえば、例えばトリアー監督のドッグヴィル…ああいうのは良いんです。狙っているのが分かるから。皮肉たっぷりなのもわかるから。でもこのミスティックリバーは…本気で信じてますか!?という印象があって非常に気持ち悪い。
 なにが、というと、「手段はどうあれ家族を守るお父さんは素晴らしい」。殺されたデイブはどうなる? ちょっとした切っ掛けでその後の人生が変わる。これは分かる。助かった二人はそれを背負ってきていた…はず?なのに、また、その、デイブが貧乏くじを引く。いや、ここで貧乏くじを引いたのではなく、最初の躓きがずっと尾を引いて彼の人生を閉じてしまったということだろうか?それならそれで良い、でも、あの終わり方は何?ジミーの嫁さんのあの笑みは何。ショーンのあの行為は何。確かにデイブの嫁さんはかなり不注意だったかもしれない。少なくともジミーに話すべきではなかった。でも、それがあの結果だとはあまりにも情けない。当然のように「あなたは正しい」と言い切るジミーの嫁さんが恐ろしい。それが、悩むジミーを助けるための奥さんのフォローとして、また、自分のだんなを信じきれなかった、デイブの嫁さんとの対比として描かれたものであったとしても、それを表すためにああいうアプローチと表現をとった、という監督の意図が私は恐ろしいんである。
 
 つまり、あの映画でかかれていた内容が恐いんではなく、映画の描き方(アプローチの仕方)がいやなのである。何か根本的に間違ってないか? ともかく、私にはよく分からない映画である。

  
何でホラーと間違っていたか、というと、クリムゾン・リバーとごっちゃにしていた模様(笑)。あちらもホラーというよりサスペンスらしいけど。

SayaT at 2005/02/15 | Comments [0]

2005年02月14日

【マスター・アンド・コマンダー】

(DVD)2003/米/ピーター・ウィアー
 ダンナが借りてきたDVDを横取り観賞。
 単純明快に面白かったわ。話はなんと言うこともなく、有能な船長率いるイギリス軍艦とライバル(?)のフランス軍艦の追いかけっこ。でもねっ帆船が凄いんですよっ嵐の海で帆船が翻弄されるんですよっ大風の中、マストの上で水夫が必死で帆をたたんだりするわけですよっ。海霧の中に帆船がぼーっと浮かんできたりするわけですよっ
 …つまりそう言うわけで、もう、帆船と操船を楽しみましたとも。映画館の大きい画面で見たかったなあ。

 最初に書きましたが、お話しとしてはどうなんでしょうねえ。一応海の男のロマンとか、有能な船長のカリスマ性とか荒くれものな海の男達を従えていくためには何が必要なのか、とか、士官候補の子供たち頑張れ!、とか、この時代の航海ってほんとにシビアだよねえ、それでも人間は海に憧れ海に出て行くとか、…ごったまぜでなんだかハッキリせず。でも全体には適当にまとまっているので、退屈はしない。私は帆船見るのが好きなので、楽しかったです。エル・アルコン思い出したり宝島思い出したり深紅の帆を思い出したり…(^^)

  
余談。帆船大好きこの時代の航海大好きなダンナの感想。
「海の男のロマンって言うから、期待してたのに!士官候補生の少年達の成長物語って言うから期待してたのに!」 期待はずれだったようで「なんかチマチマしてた…」とがっくりしてました。「白兵戦なんかになるとね、水兵の半分くらいは死んじゃうんだよ…」「修理のための木をいっぱい積んでいくと他の積み荷が積めなくて儲からないんだよ…」とぶつぶつ言ってたのは、大航海時代かアトラスか、なんかそのあたりの経験でしょうか(笑)
 
余談その2。やっぱりねえ、神懸かりなじいさまが一番危険だなあ。「板子一枚、下は地獄」、船乗り達は縁起を担ぐから大変。そうでもないと、あの時代乗り出していけなかったんでしょうね。死んでしまったあの青年は哀れだが、でも、彼は海には向いていないよなあ。陸上勤務向きだったのだな。でも訓練中には当然航海に出ないといけないだろうし、本人出たくなくても家系が海軍家系だとオヤジ様には逆らえないだろうし…と、まあ、いろいろ脳内補完をすれば楽しめるのですが、逆に言うと補完をしないとなんだか中途半端な映画って事になるんでしょうかね。

SayaT at 2005/02/14 | Comments [0]

2005年02月12日

【八日目】

(DVD)1996/ベルギー・仏/ジャコ・ヴァン・ドルマル
 これはわたしはだめでした。どう見て良いのか分からない。啓蒙映画なのかヒューマンドラマなのかファンタジーなのか、わからん。アプローチの仕方が嫌い。もうね、見ていてね、ジョルジュの仲間達が車をかっぱらって町に繰り出すところで「やめんか!お前ら!人が死ぬ!!!」と悲鳴を上げそうになったって事からしても、もうだめね、わたしにとってのこの映画は。あそこは微笑ましく「やったぞ!お前ら!それ行け、ひゃっほぅ!」と見るシーンなんでしょうに。だから、非常に評判の高い(?)花火シーンもわたしはだめ。「やめんかお前ら!火事になる!!!」としか思えないこの情けなさ。つまり全然映画世界に入り込めていないわけです。アリーに対しても「君はもっと他にやることがあるだろう」と思ってしまう。彼のあの境遇に同情も共感も理解もできなかったわたし。(ああいう境遇全ての人に、と言う意味ではない。映画での狙いは分かるが共感ができなかった、ということ) 君はジョルジュに甘えていただけではないのか、と思ってしまうにあたり、この映画は私的にはだめ。感覚が合わないです。

  
他の方々の感想を見ていると非常に評価が高いですねえ。感動したとか。映画によっては、そう言う「自分と全く違う感想」を持った方の評を読んでいてなるほどと思えることも多かったりするのですが、これはだめでした。いくら読んでも分からない。ラスト近く、なんでここでみんなが歌い出すんだよ、と言うところからわたしは受け入れられないのでだめっす(8人の女たちもなんかしょっちゅう歌って踊ってたけど、あれはああいう映画なんだろう、と、その世界観を受け入れられたので、それなりに楽しめたけどね。「八日目」は映画世界をわたしは全身で拒否してしまったようだ(^^;)。

SayaT at 2005/02/12 | Comments [0]

2005年02月06日

【オペラ座の怪人】

(劇場)2004/米/ジョエル・シュマッカー
 豪華絢爛な映画でしたねー。でもその割りには妙に画面がせせこましく感じられたり。もっと広がりがあっても良いと思うのになぁ。少しもったいなかった。
 クリスティーヌの声良いですね。(*^^*)。声楽としてはカルロッタの方が断然に巧いんですが、元からオペラなどの朗々と歌い上げる系の声は嫌いな私、クリスの細い声の方が好きです。劇場支配人達も巧いじゃないですか。合唱も良いし。眼福ならぬ耳福(なにそれ)。で、どうしても気になってしまうのが、男性2人、ラウルとファントムの歌声(^^;)。他の皆はクラシックの発声でオペラな歌い方(なにそれ、その2)をしているのに、この2人だけ異質。ラウルはまだ良いんだけど、ファントムが凄く異質……。だからデュエットをしても2人の声が混ざり合わない。きれいじゃない。耳障りでうっとりできない。
 大体が、ファントムはミューズ的な存在で、クリスは音楽の天使であるファントムと、現実の恋人であるラウルの間を揺れ動くわけです。ファントムの歌声を聞くとフラフラとそちらに惹かれて行ってしまうわけです。ファントムの歌声というのは物凄く大事だと思うのだけどな。いかん、あれではいかん!と心から思いました(^^;)。声にちっとものびがない。ハスキーで色気があるかと思うと、そうでもない。いや、この人単体で聞けばいいのかもしれないけど、クリス達の歌声の合間に聞くと、余りにもお粗末な印象を受ける。…いかんなぁ…
 と、そのあたりが一番の不満でした。
 
 お話しは、まあ切ないお話しですね。全体的にはよくまとまっているとは思います。が、私的には今ひとつはまれず。ファントムがうまく描写できていないような気がして。天上の音楽の才をその身の内にもちつつ、平気で人を殺す。クリスによって愛に目覚め、クリスによって多分「人間」になれたファントム。良いキャラクターなんだけどなあ。観ているこちらももっと胸が痛くなるような気分になっても良いと思うのだが。ミュージカルだから、こんなモノなのかな。よくわからない。

 原作も舞台も知らないわけですが、ラストはああなんでしょうか?あのラストは今ひとついただけなかったですなあ。余韻もへたくれもないわ。少なくともバラの花は要らないような気がする。

SayaT at 2005/02/06 | Comments [0]