2005年01月26日

【ぼくんち】/西原理恵子

西原理恵子 /小学館 スピリッツとりあたまコミックス
全3巻の中の第1巻↑。全てを1冊にまとめたコミックスも出ているようだけど、お財布に余裕があるなら是非、とりあたまコミックスで読まれることを強力おすすめ。絵本のような作りで、それがまた切なく哀しく、面白い。

 西原理恵子って凄いと思う。「ぼくんち」を読み「とりあたま紀行」を読んで、どういう人なんだろう、と、腕組みをして考え込むが、私ごときには答えはでない。凄い人であり見事な才能であると、私は思う。(^^;)。

 この人が実際に属する世界はよく分からないけど、この人が描く世界は、映画「モンスター」の感想でも書いたけど「私とあなたは住む世界が違う」なのである。私はこういう世界では生きてこなかったし、身近にもなかった。多分これから先も身近に見ることはないように思われる世界である。でも、ガンガン来るんですよ。堪らなく切なく愛おしく感じる。思うに、西原理恵子氏のものの考え方の根っこが大好きなのだと思う。住む世界が違っても根っこの部分が同じ人っているのだろうか。いるのだろうな、と思える。(実際、同じ様な環境、境遇に棲息している人達でもどうにもこうにも思いが沿えない人も多数いるから、世界が違っても同じようにものを考える人はいるんだろうな、と思う)

 かのこ姉ちゃんが、私は大好きだ。モンスターの主人公と同じ様な立場に、多分彼女はいる。でも、彼女は自分の「生きる道」が本能で分かっているように見える。そして彼女には守りたい子供たち(弟たち)がいる。いるけど、彼女はその子供たちを保護や道徳で囲ってしまったりはしない。かのこ姉ちゃんは無自覚にではあるが「生きていく」事についての哲学を自分の中にしっかり持っているから、子供たちに日々の辛い現実のそのまん中で、それ(人間として生きていく一番の根っこの部分)を教え込む。姉ちゃん凄い。全然立派じゃないし世俗にまみれて一般的に見れば底辺のめちゃくちゃな生活と人生なんだけど、でも、かのこ姉ちゃん凄い。彼女は一番大事な選択肢の選択を間違わないのである。これが凄い。
 しかし姉ちゃんが弟たちにどんなに愛情を注ぎ頑張ろうとも、世の中は甘くないから、弟たちのうちの兄ちゃんの方は道をどんどん踏み外していく。それは人手に渡ってしまった「ぼくんち」を取り戻すためであり、姉ちゃんのためでもある。でも、彼は道を間違える。家は戻らないし姉ちゃんの境遇も変わらないし、事態はどんどん悪くなっていくだけ。自分が道を踏み外していることを分かっていながら、彼にはもうどうしようもないのがとても哀しい。結局姉ちゃんは、昔の家を燃やしてしまい、一番末の弟を遠い親戚のじっちゃんに預ける(いつか迎えに来てな、と言って)。これが彼女の最後の選択である。とても哀しく切ない選択だ。そうして「ぼくんち」はバラバラになってしまう。…こんな風に説明すると、えらく悲惨な話のように思えてしまうけど(実際とてつもなく悲惨な内容の世界なんだけど)、それをギャグも織り交ぜて笑いを込めながら描いてしまうところに西原氏の凄いところがあるんだと思う。このマンガには、「人間にとっての一番大事な部分ってなんだ?」と言うメッセージがてんこ盛りになってると思うよ、私は。(そんなこと言ったら、西原氏は「ケッ」と言うだろうけど(笑))

  
余談の追記;

 現在毎日新聞で毎週火曜に連載中の毎日かあさん」は、さすがに一般紙連載だけあってかなり毒は抜けておりますが、でもやはり「西原氏」のマンガでとても楽しい。でもって、、やはり私は西原氏の考え方の根本が大好きなんだと思う。だって、子供の育て方、と言うか、子供を育てるに当たっての信念が同じだもん!(笑)。西原母さん頑張れ!


も一つ追記。
読んだのはずいぶん前で、最後に読み返してからももう1年くらい経ってるのに、そのまま感想なんか書くもんだから、一番大事な部分をすっ飛ばしてたじゃないか(^^;)。と言うことで、本文一部修正。アップし直し。

SayaT at 2005年01月26日 16:17
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