2004年12月25日

【ドッグヴィル】

(DVD) 2003/デンマーク/ラース・フォン・トリアー
 なんかとんでもない映画でした(これも予備知識ゼロで借りてきたからなぁ。監督、ダンサー・イン・ザ・ダークの人だったんだ。そりゃとんでもないなあ)
 ともあれ、前半は退屈(よくある設定だよなあ、と。先が大体見えるし。書割も狙ったようにしか見えなかった) 後半からは面白い(胸くそも悪い)。書割の意味も掴めてきた。お父さん出てきてからは怒濤のように面白い。(父と娘の会話が大傑作で)。
 この監督は性善説なのか性悪説なのか。どちらにしても、人間の根元はどうしようもないモノだと考えてそうだ。どうしようもなく救いがたい人間ども。下手に理屈を考えつける分だけ、犬より劣る人間共。しかし、私が一番引っかかったのは、人間の傲慢さ、と言う部分だ。人を許し、罪を許す、と言う、その傲慢さ。人に人が許せるのか。許すって何? 永遠の命題。それが恐ろしく皮肉たっぷりに描かれたわけですねえ。一件被害者に見える(いや、被害者である)グレースの、とんでもない傲慢さ(が、見えるように描く、この監督の恐ろしさ(^^;))。
 それから、下らぬ屑な人間達を一掃すれば世の中は良くなるのか?と言う命題。これはジェノサイドの理由の一つによくなります。(でもこれに対しては基本的に答えは出ている。良くなるわけないじゃん。一掃する側も同じ人間なのだから。そして、人間としての根元は同じだから。どこで一掃される側とする側のラインを引くのだろう。それは不可能なのだ)いやもう、考える考える。父と娘の会話の字幕を読みながら頭の中はフル回転です。監督、お見事です。物凄く皮肉な映画だと思います。監督が、翻弄される観客を嘲笑ってるのが見えるような気がします(^^;)。
 でもねえ。時々奇蹟のような「人」が現れるよね。それから、個人レベルまで落とせば、本当に良い人も多数存在する。人間としてどうしようもなく汚い、救いがたいものを身の内に持ちながらも、それに呑まれずに生きていける人だって多数存在する。これからどんな世の中になっていこうと、そう言う少数の人々がいる限りは人類はなんとかやっていくのでしょうね。 (そして、何かがプチッと切れたら、それでお終いになるような気もするけど。あのお嬢さんのように。最近の世の中、プチッと切れかけている?切れてみないと分からないけど、なんか、「プチッ」が近づいてきているようで怖い)

 ともあれ、二度と見たくない映画だけど、面白かったです。

余談:ジェノサイド映画で疲れ果てたので、ちょっと気分を変えてと思ったのに、結局同じ様な映画を借りてきてしまう私って…自分で自分がなんだかいや(_ _;)(ただのサスペンススリラーかと思ったのだもの←事前調査しなさい、私)

SayaT at 2004年12月25日 09:48
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